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感染症・研究・治験


感染症

こどもの発熱

こどもの発熱の原因はほとんどが感染症です。
病原体が感染すると身体の免疫システムがその侵入を察知してサイトカインという発熱物質を産生します。
これが体温調節をしている脳の間脳に作用して体温を上昇させます。
なぜ、感染症の時に体温を上昇させるのでしょうか?
実は多くの病原体は34~35℃の温度で活発に増殖するため、体の免疫は体温を上げて病原体の増殖を抑制しているのです。
しかし、時に高熱が持続してしまうことがあり、
その場合体力の消耗を防ぐ目的で熱冷まし(解熱剤)を使用します。
熱冷ましは高すぎる体温を1℃程度下げればよいので、
高熱時は使用してもあまり効果がないように感じるかもしれません。
体温を平熱まで下げてしまうと、薬の作用が切れた時にまた高熱まで体温が急上昇するので、小さい子では熱性けいれんを誘発してしまうリスクがあります。

細菌感染とウイルス感染症の違い

細菌もウイルスも目に見えない位小さな病原体です。
この2つはどのように違うのでしょうか?
細菌は一つの細胞からなる単細胞生物で、栄養源さえあれば自己増殖が可能です。
人の体に侵入して病気を起こす細菌もいれば、ヤクルトや納豆など私たちの生活に有用な細菌もいます。
また、私たちの身体にも多くの種類の細菌がいて、
腸管内や皮膚表面の細菌は腸内や皮膚の環境をいい状態に保ち、有害病原体の侵入を防いでくれています。
こどもの病気の原因となる細菌では、溶連菌(β-A群溶連菌)、肺炎球菌、
インフルエンザ桿菌、マイコプラズマ、百日咳菌、病原性大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなどがあります。
細菌には抗生物質が有効なのですが、各抗生物質には効果のある菌(有効菌種)が決まっているので、治療しても効果が無い場合には抗生物質を変えることが重要です。
また、最近では抗生物質の使いすぎにより、本来薬が効くはずの菌に薬が効かないという薬剤耐性菌の問題があり、安易に抗生物質を使用しないことになっています。
一方、ウイルスは細菌よりもずっと小さい病原体です。
遺伝子と蛋白質から構成されていて、栄養源があっても自己増殖はできません。
必ず生きている細胞に感染し、その細胞の中で増殖します。
抗生物質は効かず、現在小児科領域でウイルスをやっつける薬があるのは、インフルエンザと水痘だけです。
かぜの原因もウイルスですので、特効薬はありません。

かぜ症候群(急性上気道炎)

病原:いわゆるかぜ症候群を起こすウイルスは極めて多く、ライノウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルスなど多数のウイルスが関与しており、その総数は250~300種類といわれています。
潜伏期:1~6日、平均2日。
症状:原因のウイルスにもよりますが、発熱、鼻汁、鼻閉、咽頭痛、頭痛、全身倦怠感、流涙、乾性の咳などです。
診断:一部のウイルスについてはウイルスを検出するキットがあります。
治療:インフルエンザを除いて、かぜウイルスに対する治療はありません。症状に対する治療をする対症療法が一般的です。
合併症:こじらせると中耳炎、気管支炎、肺炎、脳炎などを起こします。
予防:かぜがはやってきたら、マスク着用やうがい、手洗いが予防上重要です。


急性気管支炎

病原:かぜウイルスやマイコプラズマなど
病態:かぜ(急性上気道炎)や下気道炎に伴って発症します。小児のかぜの経過では、多くが気管支炎を起こしています。大半はウイルス性です。
症状:痰のからんだ咳(湿性咳嗽)や発熱が主な症状です。原因の病原体によります。
診断:聴診所見や臨床経過から診断します。
治療:ウイルス性では対症療法、細菌感染症では抗生剤治療。

クループ症候群(急性喉頭気管支炎)

病原:パラインフルエンザウイルスによるものが多い。
潜伏期:2~4日間。
症状:比較的突然に発熱、声がれ、イヌが吠えるような特徴的な咳(犬吠様咳)が始まり、進行すると息を吸うときに荒い音(吸気性喘鳴)と陥没呼吸が見られ、夜間に増強する。これは気管支の入り口部分(喉頭)に炎症がおこり、狭窄が起こっているための症状であり、悪化すると低酸素や意識障害を起こすようになる。この場合、緊急の処置が必要となる。通常は数日の経過で自然と改善する。
診断:特徴的臨床症状と所見より診断は可能。原因ウイルスを特定する簡便検査はない。
治療:ウイルス性なので、特効的治療はなく、悪化時血管収縮剤の吸入やステロイド剤の投与を行う。

インフルエンザ

病原:インフルエンザA、B型
感染様式:飛沫感染および接触感染。
潜伏期:1~3日
症状:症状はA型とB型および年齢により多少異なる。A型の場合、乳幼児では発熱、不機嫌、哺乳量低下等で始まり、鼻汁、咳が続く。発熱が微熱にとどまる例もある。年長児や成人では、悪寒、発熱、咽頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、眼痛が初発症状であり、咳や鼻汁が続いて現れる。発熱は39~40℃に達し、2~5日間持続する。腹痛や下痢などの腹部症状も見られる。経過により次第に鼻汁や咳症状が目立つようになる。咳は後半痰がらみとなる。一方、B型では筋肉痛や胃腸症状がA型に比べ、顕著であることが多い。
診断:インフルエンザ抗原検出キットが普及しており、診断は容易である。
治療:抗インフルエンザ薬が複数あり、年齢、症状に応じて薬剤を選択する。但し、健康で基礎疾患を有さない小児であれば、あえて治療薬を投与する必要はない。

ヘルパンギーナ

病原:主にコクサッキーA群ウイルス。
潜伏期:2~10日。感染様式は接触、飛沫感染。
症状:急激な高熱で始まり、のどの痛み、頭痛、食欲不振が見られます。発熱は1~3日間続き、発症当日はのどが赤いだけですが、翌日あたりからのどに水疱が出現、これが破れて潰瘍となり、強いのどの痛みを訴えます。症状は1週間ほどで改善しますが、のどの痛みのため摂食障害を起こすと点滴などの治療が必要となります。原因のコクサッキーA群ウイルスは10種類以上もあるので、何回もかかる病気です。
治療:治療薬はなく、対症療法となります。
のどが痛いので、酸味のある果物やトマト、ジュース類、シリアルやせんべいなどの固い物、熱い物をいやがります。冷たいうどんやそうめんを与えて症状が改善するまで様子をみます。
合併症:まれに髄膜炎や脳炎、心筋炎などを起こして命にかかわることがあります。
注意点:治った後、2週間は予防注射を受けないようにします。
隔離:原因ウイルスは唾液中に1週間、糞便中に3~4週間も排出されますので、完全な隔離が困難な病気です。そのため、治癒証明書は不要になっています。

のどをみると口蓋垂(いわゆるのどちんこ)の両側に初期には水泡形成がみられ、時間経過とともにそれが破れて潰瘍となります、こうなると咽頭痛が強くなり、酸味のある柑橘類やキウイなどのフルーツやトマトなどがしみるため、食べるのをいやがるようになります。柔らかく、のど越しの良いそうめんや冷たいうどんを与えましょう。
(写真は佐久間先生から提供)

手足口病

病原:コクサッキーA群ウイルスのA16型、A10型やエンテロウイルス71型などですが、近年A6型ウイルスの流行が注目されています。
潜伏期:3~7日。
症状:口内に口内炎様の粘膜疹が出現、手のひらと足底およびお尻に水疱性発疹が出現します。発熱は半分くらいの人で見られます。
最近問題となっているA6型による手足口病は特異で、高熱からヘルパンギーナ様症状を経て、上下肢に広範に発疹が出現、これが治ったときにかさぶたになります。治った後、30~40%の人で爪がはがれる爪甲脱落症が見られます。
治療:治療薬はなく、口内疹による摂食障害が強い場合は、ヘルパンギーナ同様与える食事に注意します。
合併症:まれですが、髄膜炎や脳炎の報告例があります。
注意点:治った後、2週間は予防注射を受けないようにします。
隔離:原因ウイルスは唾液中に1週間、糞便中に3~4週間も排出されますので、完全な隔離が困難な病気です。そのため、治癒証明書は不要になっています。

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麻疹(はしか)

病原:麻疹ウイルス。感染様式は空気感染、飛沫感染。
潜伏期:10~11日。
症状:発熱とともに徐々に悪化する咳と鼻汁が見られます。目の充血と目やにもみられます。発熱は2~3日続いた後一旦下がりますが、再び上昇し、発疹が出現します。発疹は顔から出始め、次第に下半身に向かって拡大していきます。この頃には痰がらみの咳と鼻汁がひどくなり、全身状態も悪化します。
発熱は発疹出現後、3~4日さらに持続し、解熱します。
発疹は最初はピンク色ですが、次第に発疹は融合し、解熱する頃には褐色になり、一過性の色素沈着を残します。
診断:特徴的な症状と顔貌、発疹の形態から診断は容易です。発疹が出る前に口内頬粘膜にケシの実様の特徴的口内疹(Koplik斑)が出現します。
治療:治療薬はなく、対症療法となります。
合併症:重症出血麻疹や麻疹脳炎、肺炎が見られます。合併症によっては命にかかわります。
予防:麻疹風疹ワクチンを2回、きちんと受けることが大事です。
注意点:以前のワクチン接種で十分な免疫を獲得できなかった人や母親からの移行免疫が残っている乳児が麻疹にかかると非典型的経過をとる軽症麻疹を発症することがあります。軽症麻疹では症状が軽症であったり、一部の症状を欠いたりして、麻疹と診断されず、周囲に感染を拡大するリスクがあります。麻疹にかかった後、4週間はワクチン接種を控える必要があります。
隔離:解熱後2日を経過するまで隔離が必要です。

風疹(3日はしか)

病原:風疹ウイルス
感染様式:飛沫感染(経気道感染)
潜伏期:2~3週間
症状:発熱に伴って発疹とリンパ節の腫脹が見られます。発熱は2~3日続きます。発疹は顔から出現し、体、四肢へと拡大しますが、四肢に出現する時には顔の発疹は消失しています。発疹はかゆみを伴う淡い紅色で、大きさは2~3mm。麻疹のように融合はせず、また色素沈着も残しません。発疹は3日前後で消失します。リンパ節の腫脹は発疹出現数日前から出現し、3~6週間で消失します。全身性に見られますが、特に頭部、後頭部、耳介後部に著明に見られます。
診断:症状や周辺の流行状況を参考に診断します。厳密には血液中の抗体を検査します。
治療:治療薬はなく、対症療法となります。
合併症:関節炎、脳炎、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血が見られますが、問題となるのが先天性風疹症候群(後述)です。
予防:麻疹風疹ワクチンを2回接種します。
先天性風疹症候群:妊娠中に風疹に罹患した場合、胎児に風疹ウイルスが感染し、妊娠の時期によって様々な先天性障害を引き起こします。特に妊娠3ヶ月までの器官形成期に感染を受けると先天性心疾患、視力障害、難聴、中枢神経障害などが起こります。

水痘(みずぼうそう)

病原:水痘・帯状疱疹ウイルス
感染様式:空気感染、飛沫感染、接触感染
潜伏期:2~3週間。
症状:前駆症状として発熱、頭痛、咽頭痛が発症の1,2日前に見られることがある。発疹出現をもって発症とする。発疹は紅斑→丘疹→水疱→膿疱→痂皮(かさぶた)と経時的に変化する。水疱の大きさは1~5mmほどで、周囲に紅斑を伴う。発疹は体幹にはじまり、顔、四肢に拡大するが、末梢ほど発疹の数は少ない。中等度の発熱が見られる。一般的に発疹数と大きさは発熱の程度に相関する。また、年長になるほど全身症状が強い傾向がみられる。 
診断:発疹を臨床経過で診断は容易である。最近では、水疱液を検体とする迅速診断キットが発売されている。
治療:抗ウイルス薬があり、発症早期に服薬することで治療は可能。細菌感染を合併した場合は抗生剤治療を併用する。
合併症:細菌の二次感染症、水痘肺炎、水痘脳炎、髄膜炎、ライ症候群
予防:水痘ワクチンの2回接種。


帯状疱疹

病原::水痘・帯状疱疹ウイルス
発症病理:水痘・帯状疱疹ウイルスは体内の神経節に一生潜伏しており、免疫力が低下すると潜伏しているウイルスが再活性化して発症する。
症状:前駆症状として帯状疱疹が現れる場所にピリピリした痛みと痒みが見られ、発症すると水痘様の発疹が密集して出現してくる。発疹は水痘と同様、時間経過で痂皮化する。
治療:抗ウイルス薬の内服および外用。
後遺症:神経痛を残すことがある。
予防:水痘ワクチンの接種。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

病原:おたふくかぜウイルス
感染様式:飛沫感染、接触感染。
潜伏期:2~3週間。 
症状:前駆症状として、発熱、頭痛、倦怠感が見られる。唾液腺の腫脹をもって発症とする。腫脹する唾液腺は耳下腺炎の頻度がもっとも多いが、顎下腺、舌下腺が腫脹する例もある。耳下腺腫脹の場合30%は片側性である。腫脹は有痛性で1~6日間持続、咀しゃくで増強する。
診断:症状および流行状況から診断は比較的容易。
治療:治療薬はなく、鎮痛両方などの対症療法が主体。
合併症:無菌性髄膜炎が最も多く、唾液腺腫脹の3~10日後の発症が多い。脳炎では感音性難聴を起こすことがある。また、精巣炎、膵炎、卵巣炎、甲状腺炎。
予防:ワクチン接種。2回接種が望ましい。

アデノウイルス感染症

病原:アデノウイルス
感染様式:飛沫や糞便による経気道、経口感染。接触感染。
潜伏期:5~7日。
症状:アデノウイルス感染症には80種類を超える型が存在し、型の種類によって様々な症状および病型が見られます。
① 咽頭結膜熱(プール熱) 
38~39℃の高熱が4~5日持続し、のどを見ると扁桃腺が腫脹、白苔がついて、さらに目が充血します。鼻閉が次第に強くなる傾向があります。以前は夏場にプールを介して流行しましたが、最近では夏から年末にかけて流行します。
② 流行性角結膜炎(はやり目)
成人に多く、発熱を伴わないことが多い。目の充血とむくみ、目やにが主症状です。結膜炎が改善した後、疼痛を伴う角膜炎を起こし、また視力障害を残す例があります。
③ 咽頭炎・扁桃炎  
のどが赤くなり、発熱が4~5日持続。25%程度に咳症状が見られる。発熱は持続するが元気でいることが多い。鼻閉がみられる。
④ 胃腸炎
アデノウイルスの一部は胃腸炎を起こします。特に乳児で白色便下痢症を起こし、嘔吐や下痢が続きます。
診断:現在はアデノウイルス抗原を検出する迅速キットがあるため、診断は容易。
治療:現在のところ、アデノウイルスに有効な薬はない。対症療法が主体となる。
合併症:アデノウイルス7型は重篤な肺炎を起こす。
予防:ワクチンはない。施設内で患者が発生した場合、患者を隔離して、患者と共通のタオル使用を避ける。型が違うと再感染するので、何度もかかる病気。
隔離:解熱後、2日を経過するまで隔離が必要。治癒後2週間は予防接種を避けること。

アデノウィルス感染症の中でも典型的なのは滲出性扁桃腺炎を起こした例です。写真は両側の扁桃腺が赤く腫脹し、表面に白苔といわれる炎症性滲出物が付着しています。写真は佐久間先生からの提供です。

RSウイルス感染症

病原:RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)。気道に感染すると感染細胞で合胞体(Syncytium)を形成する。
感染様式:飛沫による経気道感染。手指による接触感染も起こる。
潜伏期:4~6日。
症状:主に乳幼児が感染を受け、透明な鼻汁と咳、発熱が見られる。最初は軽度の咳でも時間経過とともに次第に喘鳴が出現してくる。発熱は高熱が3~5日間持続する。喘鳴が悪化し、陥没呼吸、多呼吸など呼吸障害を起こすような例は入院管理が必要となる。咳症状は長引き、軽快までに7~21日程度要する。
診断:RSウイルスを検出する抗原検査キットがあるが、1歳未満までしか保険適応がない。
治療:治療薬はない。対症療法が主体となる。
合併症:RSウイルスによる中耳炎の頻度は高い。乳幼児突然死症候群の一部にRSウイルス感染が関与している。
予防:先天性心疾患や呼吸器疾患など基礎疾患を有する乳児には、予防的にRSウイルスに対するモノクローナル抗体薬(シナジス)の注射がなされる。
隔離:発熱や咳など主要な症状が改善するまで、集団生活には戻さない。

ヒトメタニューモウイルス感染症

病原:ヒトメタニューモウイルス。2001年にオランダで発見された新しいウイルスであり、まだ一般的には知られていない。ウイルス学的にはRSウイルスに似ている。
感染様式:飛沫による経気道感染。手指による接触感染も起こる。
潜伏期:4~6日間。
症状:発熱、鼻汁、咳で始まり、発熱は4、5日間持続する。次第に咳症状が悪化、喘鳴がみられるようになる。呼吸障害が起こり始めると喘鳴、多呼吸、陥没呼吸がみられるようになり、経口的水分摂取が不良になれば入院治療が必要となる。
診断:抗原検査キットが発売されている。
治療:治療薬はなく、対症療法が主体となる。
合併症:肺炎
予防法:なし
隔離:発熱や咳など主要な症状が改善するまで、集団生活には戻さない。

突発性発疹

病原:ヒトヘルペスウイルス6型、7型。
感染様式:唾液などからの接触感染。家族からの水平感染と考えられる。
潜伏期:10~14日間。
症状:39~40℃の高熱をもって突然発症し、3~4日間発熱が持続する。発熱の程度の割に全身状態は良好である。発熱時熱性けいれんを起こすことが多い。解熱した後、体幹中心に2~5mm程度の紅斑が見られる。解熱すると非常に不機嫌となり、食欲低下、活気も低下することが多い。また、解熱前から少し下痢気味になることが多い。
診断:臨床診断が主。
治療:治療法はない。
合併症:脳炎
予防法:ない。
隔離:解熱後一日を経過すれば、隔離解除して良い。

マイコプラズマ感染症

病原:マイコプラズマ菌
感染様式:飛沫感染
潜伏期間:4日~3週間以上。
発症メカニズム:乳幼児では無症状や軽症例が多く、年長児では肺炎などの重症例があることから再感染と免疫反応が肺炎発症に関与していると考えられている。
症状:発症は緩慢であり、発熱、全身倦怠感、咽頭痛、咳で始まる。咳は徐々にひどくなり、痰がらみとなる。咳は夜間睡眠がとれないほど頑固な咳で有り、治療を始めても2週間以上は持続する。診察上異常所見はなくてもレントゲン上肺炎が認められる例があり、レントゲン所見からマイコプラズマを疑うことも少なくない。肺炎は重症でなければ、入院を要することは少ない。
診断:マイコプラズマ抗原迅速キットがあるが、感度が必ずしも高くなく、陰性に出ることあり、総合的に判断する。確定診断には抗体検査が必要。
治療:マクロライド系抗生剤が第一選択となるが、近年マクロライド耐性マイコプラズマの割合が上がってきており、治療を開始しても発熱などの症状が改善しない例がある。この場合、8歳以上であれば、テトラサイクリン系抗生剤が有効である。
合併症:肺炎に胸水貯留を合併することがある。中耳炎や髄膜炎などを起こす。
予防法:なし。
隔離:主要症状が改善するまで、隔離する。

ウイルス性胃腸炎

病原:ロタウイルス、ノロウイルス、腸管アデノウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、エンテロウイルスなど多数のウイルス。
感染様式:経口感染、飛沫感染
潜伏期間:原因ウイルスによるが1日~数日。
発症メカニズム:経口的に取り込まれたウイルスが消化管で増殖し、発症する。ロタウイルスはウイルスが感染するだけでなく、毒素を産生して嘔吐・下痢症状を悪化させることがわかってきた。
診断:ロタウイルス、ノロウイルス、腸管アデノウイルスについては、様々な迅速キットが開発されており、下痢便からウイルスを短時間で検出することが可能である。但し、ノロウイルスの検査は3歳未満でないと保険上実施できない。
治療:対症療法が主体となる。嘔吐が激しい場合は、禁食とし、食欲の回復を待つ。脱水症や激しい嘔吐には点滴で補液療法を実施する。また、下痢については止痢剤は投与せず、整腸剤で対応する。
合併症:まれに腸重積症を合併することがある。脱水も重症になると、循環障害を起こして命にかかわる。
予防法:手洗いが重要である。一般に患者さんの糞便には2~3週間以上もウイルスが排泄されるので、おむつから漏れるような下痢便では水平感染を予防する目的で隔離が必要である。
隔離:食欲と活気が回復し、下痢便の回数が減少し、便性が改善するまで隔離する。

細菌性胃腸炎

病原:病原性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラ菌など多数の細菌。
感染様式:経口感染、飛沫感染
潜伏期間:原因細菌にもよるが1日~7日。
発症メカニズム:経口的に取り込まれた細菌が消化管で増殖し、発症する。。
診断:下痢便の培養検査で、原因菌を特定する。但し、培養の検査は3日~5日程度結果が出るのにかかる。
治療:抗生剤が有効である。また、脱水症が強い場合や嘔吐などが強い場合には、点滴治療を実施する。腸重積症を合併することがある。脱水も重症になると、循環障害を起こして命にかかわる。
予防法:手洗いが重要である。一般に未治療の患者さんの糞便には感染菌が排出されているので、付着した場合はよく手を洗う。
隔離:食欲と活気が回復し、下痢便の回数が減少し、便性が改善するまで隔離する。

研究

当院では新しいワクチンの臨床治験、インフルエンザ治療薬の臨床治験、
新しい検査キットの共同開発、新しいウイルス診断キットの性能評価なども実施しております。

研究関係

当院では日々の診療の中で、原因が明かでない感染症や症状の患者様を確認した場合、原因を究明すべく外部の研究機関に病原体の分析を依頼することがあります。その結果、新しいウイルス感染症や通常ではない症状を呈する疾患が判明した場合、患者様にその旨をお伝えし、学会や論文でそのことを報告することにしております。何卒、皆様のご理解とご協力をお願いします。また、外部研究機関に分析を依頼する場合、個人情報については保護されますのでご安心下さい。また、このような外部研究機関への検体の分析を希望されない患者様は、お気軽にお知らせください。

最近の学会発表とその内容

2018年7月 第19回日本アデノウイルス研究会(東京)

演題「静岡県藤枝市における最近6年間の小児アデノウイルス感染症の分析および新型アデノウイルス54型の施設内流行について」
内容:当院で確認した過去6年間のアデノウイルス感染症について、アデノウイルスの遺伝子型と臨床症状について解析しました。また、市内某保育園で見られた新型アデノウイルス54型の施設内感染について報告しました。

2018年4月 第121回日本小児科学会総会(福岡)
演題「静岡におけるG8P[8]ロタウイルス株流行時のロタウイルスワクチンの効果」
内容:ロタウイルスワクチンの普及によりロタウイルス感染症の発生頻度は漸減傾向でしたが、2017年にはなぜかロタウイルス胃腸炎の患者さんが急増しました。分析の結果、その原因はこれまで日本ではあまり流行しなかったG8P[8]株によるアウトブレイクであったことが判明しました。このG8型は通常のロタウイルスワクチンには含まれていない遺伝子型のため、果たして現在のワクチンが有効なのかが問題となります。分析の結果、現行ワクチンであるロタリックスはこのG8株に対して、発症を阻止することはできませんでしたが、明らかに症状を軽減させており、ある程度の有効性が評価できました。

この演題は以下、論文として発表してあります。
Role of rotavirus vaccination on an emerging G8P[8] rotavirus strain causing an outbreak in central Japan. Vaccine 36:43-49, 2018.最近の手足口病の変化について国立感染所研究所発行の病原微生物検出情報に特集を投稿しました。
特集関連情報「2013年および2017年におけるコクサッキーウイルスA6型による手足口病患者の臨床的・疫学的観察」

内容:2011年にコクサッキーウイルスA6型による新しい手足口病を報告しましたが、その臨床症状は徐々に変化をしています。2013年と2017年の患者さんの比較検討した結果を報告しています。病原微生物検出情報 38(10) 198-199, 2017.論文「Three clusters of Saffold viruses circulating in children with diarrhea in Japan」Infection, Genetics and Evolution 13:339-343, 2013.」
内容:サフォードウイルスはピコルナウイルス科カルジトウイルス属に属するウイルスであり、まれなウイルスである。当院より1例を検出し、報告した。論文「Clinical manifestations of Coxsackie A6 infection associated with a major outbreak on hand foot, and mouth disease in Japan. Jpn J Infect Dis 66:260-261, 2013.」

内容:2011年にコクサッキーA6型による新しい手足口病の全国流行がみられ、その臨床像についてまとめた。論文「Hand, foot, and mouth disease caused by coxsackievirus A6, Japan, 2011.  Emerging Infectious Diseases 18(2):337-339, 2012.
内容: 2011年の全国流行したコクサッキーA6型による新しい手足口病を報告。論文「近年大規模流行を引き起こしたコクサッキーA6型感染による手足口病の特徴と疫学調査 大同生地域保健福祉研究助成報告書より」教科書執筆
小児内科第44巻 小児疾患の診断治療基準 東京医学社 
「アデノウイルス」
 
臨床医のための呼吸器・消化管ウイルス感染症 診断と治療社
「アデノウイルス・腸管アデノウイルス」

研究機関との連携について

当院は国立感染症研究所および日本大学医学部微生物分野の研究室と連携しエンテロウイルス・アデノウイルス・ノロウイルス・ロタウイルスなど様々な下痢ウイルスの検査を行っております。

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